「分断合衆国」という不穏なタイトルのこの曲は2004年のアルバム未収録作品で、知る人ぞ知る楽曲である。多作家プリンスは膨大な作品をシングルのB面やカップリングとして発表することも多く、それ故に熱心なファンはシングルも買い集めていた。体を揺らしたくなるミドルテンポのファンキーな曲に載せて、ブッシュ政権だった当時のアメリカを揶揄して歌われる歌詞の内容は、まるで今の世の中を風刺しているようでもある。だが「プリンスは未来を予見していた」などと評するのはお門違いだろう。多かれ少なかれ、こうした分断が世の中から消えることは無いからだ。動物も人間も、本能的に仲間とそれ以外を分けようとするもの。自分の身を守るために備わった習性だから消し去ることはできない。だが人間だけは、対話や社会の仕組みを使ってそれを乗り越えることができる。それこそが知性だ。
曲のブレイクでは、説明もなく人種や宗教、セクシャリティが列挙され、あらゆるものが対立軸になり得ることを想起させる。粒あん派かこしあん派か、という些細なことですら人間は揉めたりするのだ。何度火を消しても常にくすぶり続ける問題だからこそ、粘り強く声を上げる必要がある。プリンスは社会問題を題材にした歌をいくつも作ってきた人だ。もし彼が生きていたら、今のトランプ政権にどんなメッセージを歌っただろう。
(自称プリンス学芸員 ひろあつ)
※次回12月13日付掲載予定。